成年後見制度の概要-成年後見、補佐、補助の法定後見制度を中心に―
- 2019/8/8
- 財産管理・後見
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最近親がボケてきたんじゃないか、痴呆なんじゃないか、これから介護をどうしようか、そんな不安を感じたこたことがある方は少なくないでしょう。
介護という問題を考えるにあたっては、その費用をどうやって捻出していくかということも大きな問題となります。自宅を処分する、金融資産を処分する等の方法により費用を捻出しようにも、本人が元気なうちであればいいですが、本人が弱り切ってしまったあとでは、本人の意思を確認することも難しく、処分することもままなりません。そのような事態に対処できるのが、成年後見制度です。
平成12年に制度がスタートして以降、成年後見制度の利用件数は右肩上がりで伸び続けているようです。成年後見、補佐、補助に加えて遅れて導入された任意後見も含め成年後見制度と括られるのが一般的ですが、平成30年のこれらの制度に関する開始や選任の申立件数は、平成30年で36,549件もの数となっています。
より必要性が高まり身近なものとなっている成年後見制度について、まずは法定後見制度(成年後見、補佐、補助)を中心にその概要を説明します。
1.成年後見制度とは
成年後見制度の目的は、認知症、知的障害、精神障害などの様々な理由により判断能力が不十分な状態にある方を保護し、支援をしていくことにあります。
一般的には不合理であるとか、詐欺的であると思われるような契約でも、判断能力が不十分な状態にあればこのような契約を締結してしまう危険性があります。このような危険から判断能力が不十分な状態にある方が保護され、安心して生活できる仕組み作りが成年後見制度の目指すところです。
一方で、自己決定権という観点からすれば、判断能力が不十分な状態にあるといっても、その程度に応じて、その方の決定を尊重することもまた必要であり、これもまた成年後見制度の目指すところといえます。
2.成年後見制度の概要
成年後見制度は、大きくは法定後見制度と任意後見制度に分けられます。
そのうち、法定後見制度は、さらに、後見、補佐、補助の3つが制度として設けられており、本人の判断能力の程度に応じて制度を選ぶことができます。
このうち、後見の「判断能力が欠けている状態」が最も判断能力が不十分な状態です。本人をさまざまな危険から守る必要性が高い状態ですので、成年後見人には、広範囲にわたる代理権が与えられます。
一方で、補助の「判断能力が不十分な場合」が後見制度の中では最も判断能力がある状態ですので、本人の意思が最も重視される形となり、補助人は限定的な範囲で本人を支援していくことになります。
3.まとめ
今回は、制度の概要のみを簡単にご説明しましたが、また別の機会にそれぞれの制度やこれに関する諸問題については取り上げていきたいと思います。
相続に関する争いについては、司法統計の遺産分割調停事件の件数が増加していることからも明らかなように、全体として増加傾向にあることは明らかです。そのような相続に関する争いが起きやすい中では、家族であっても勝手に財産を処分するようなことが後に判明すれば、相続の場面になり財産の使い込みを行った等と他の相続人から責められてしまうことになりかねません。
このような社会の流れにあっては、財産管理を行うにあたっては、より慎重かつ法に則った対応が求められることになるため、成年後見制度への注目はさらに高まっていくことになるでしょう。