遺言は取り消しや変更できないの?~遺言の撤回とは~
- 2020/4/30
- 遺言書
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遺言を取り消したり変更したい!
遺言を作成する時は、自分が死んだ後にこうして欲しいということをじっくり考えて作成すると思います。しかし、しばらくして事情が変わって遺言を取り消したり変更したいと思うことがあるかもしれません。では、どうやって取り消したり変更したりするのでしょうか。
遺言の撤回とは?
遺言を取り消すことは、遺言の撤回といいます。遺言者は、生前においては、いつでも遺言を撤回することができます。ただし、遺言の撤回は、遺言の方式によらなければなりません。遺言の方式とは、公正証書遺言とか自筆証書遺言といった遺言のことです。要するに遺言を撤回する遺言をするということです。ここでは、同一の方式による必要はありませんから、自筆証書遺言を公正証書遺言で撤回するといったことも可能です。できれば「撤回する」と記載して明確にしておくのがよいですが、仮に「撤回する」と記載していなくても、遺言の効力を否定する趣旨の文言があれば、撤回として認められます。
遺言を変更する方法はないの?
もっとも、遺言で撤回しなくても、一定の場合には撤回があったものとされる(擬制される)ことがあります。民法では4つが規定されています。そのうちの1つに以下のような条文があります。
前の遺言と内容の抵触する遺言がされた場合には、抵触する部分について前の遺言を撤回したものとみなす(民法1023条1項)。
いわゆる抵触遺言といわれています。遺言が複数ある場合には、日付が後の遺言が優先されます。これは、遺言が遺言者の最後の意思を尊重する制度だからです。とすると、新しい遺言を作成することで、抵触する部分については、撤回されたものとして、新しい部分が遺言の内容となります。これによって遺言の変更ができることになります。
その他の撤回
さて、せっかくですから遺言によらない撤回の残りの3つも簡単に紹介しておきます。
2.遺言と抵触する生前処分がされた場合には、抵触する部分について遺言を撤回したものとみなす(民法1023条2項)
3.遺言者が故意に遺言書を破棄した場合には、破棄した部分について遺言を撤回したものとみなす(民法1024条前段)
4.遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合には、破棄した部分について遺言を撤回したものとみなす(民法1024条後段)
2は、例えば遺言でAさんにあげる(遺贈する)としていた物を売ってしまったといったようなケースですね。売るという行為は、Aさんにあげるという部分と抵触しますから、Aさんにあげるという部分は撤回されたことになります。3は、同じくAさんにあげるとしていた部分の遺言を破棄した場合、4はAさんにあげるとしていた物を壊してしまった場合で、それらの部分は撤回されたことになります。いずれも、遺言ではありませんが、行為自体から遺言者の意思が明らかですから、行為によって明らかになった遺言者の意思を優先するということですね。
撤回の撤回って?
では、撤回したということを撤回したい!という場合はどうでしょうか?少し頭が痛くなってきますが、遺言書でAさんにあげるとしていた部分を次の遺言書で撤回した場合、更にその撤回したことを撤回するという遺言を作った場合、どうなるでしょうか?結論から言うと、元々のAさんにあげるという部分が復活することは原則としてありません。ただし、Aさんにあげるという遺言書を撤回した行為が、錯誤(旧法では含まれていません)、詐欺、脅迫によるものであった場合には、復活することが認められています。
遺言を撤回したり変更したい場合には公正証書遺言をおすすめします
さて、このように遺言を撤回したり変更したりしたい場合、公正証書遺言によることをおすすめします。すでにご説明しているとおり、撤回や変更というのは、前の遺言との関係が問題になりますから、明確に新しい遺言として残しておくことが安全です。もちろん、撤回や変更の程度などご事情によって最適な方法も異なってきますから、まずは弁護士にご相談ください。