危急時遺言

遺言書を書きたいと思う本人が、病気や怪我などで死が迫っていて自分で文章を書けない状態にある時、本人による自署や署名押印をせずに、口述により遺言を作成することが認められている遺言の方法があります。
この方法による遺言を「危急時遺言」と言います。

危急時遺言が認められる要件は以下のとおりです。

①遺言者が死亡の危急にあること
②(遺言の趣旨を口述する時)証人3人以上の立会いがあること
③遺言者が証人3人のうち一人に遺言の趣旨を口述すること
④口述を受けた証人が遺言を筆記すること
⑤筆記した証人が、遺言の全文を遺言者とその他証人に読み聞かせること
⑥各証人が、筆記内容が正確であることを確認し、証人全員が署名捺印を
 すること 
⑦遺言の日から20日以内に、証人の一人または利害関係者によって遺言者
 の住所地を管轄とする家庭裁判所に遺言書の確認申立※をすること


※◆⑦の確認申立に必要なもの◆
・遺言者の戸籍謄本
・遺言者の住民票
・遺言書写し
・立会人全員の住民票

なお、この方法は、遺言者に死が迫っていて遺言書の作成が難しい状態から特別に認められた手段であるため、遺言者が自分で遺言書を作成できる状態になって(快復して)6か月間が経過(生存)したときは、危急時遺言は無効になります。

⑦の遺言書の確認手続を終えた後には、遺言書の検認申立手続行います。
遺言書の検認手続もまた、家庭裁判所にて手続を行います。

この2つの裁判所での手続きを経て、遺言書は遺言の内容を執行できる状態になります。
(遺言書の検認申立については、当サイトの「遺言書の検認申立~遺言書を見つけたら~」をご参照ください。)

まとめ

危急時遺言の場合は、遺言者が自筆で文字を書けない場合でも口頭で遺言を残すことができる措置ではありますが、遺言の日から20日以内に家庭裁判所に遺言の確認申立をしなければいけないこと、その後には検認申立も行う必要がありますので、手続の完了までに手間がかかってしまいます。

遺言者の身体的に、公証人に出張をしてもらって公正証書遺言を作成する時間をとることが可能な状態にあれば、遺言書の確認申立・検認申立といった裁判所の手続で時間や手間をかける必要のない「公正証書遺言」の作成をするのがよいでしょう。


弁護士 前田 悠介(東京リーガルパートナーズ法律事務所)

投稿者プロフィール

東京弁護士会所属。東京リーガルパートナーズ法律事務所代表。
【略歴】
都内大手法律事務所での勤務を通じ、多くの企業顧問業務を担当。その他にも、相続、離婚、消費者問題等の個人の代理人業務、刑事事件の弁護人業務まで幅広く経験を積む。
その後、電子書籍販売サイトを運営するIT系ベンチャー企業に勤務し、電子配信ビジネスにおける法務全般に関わりつつ、ライセンサーとの契約締結交渉を行う。また、法律事務所に所属して以降は、大規模組織での非常勤職員としての業務を開始する。
これまでの経験を生かし、顧客へさまざまな角度から情報を提供できる事務所を目指し、2015年に東京リーガルパートナーズ法律事務所を設立。
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